フォントを選ぶだけでブランドは変わる。タイポグラフィ入門

フォントを選ぶだけでブランドは変わる。タイポグラフィ入門 Journal
フォントを選ぶだけでブランドは変わる。タイポグラフィ入門

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第一印象を決定づける「文字の形」

私たちが普段目にする商品パッケージ、企業のWebサイト、電車の広告などには、必ずと言っていいほど「文字」が使われています。そして、その文字がどのようなフォントで書かれているかによって、私たちは無意識のうちに「高級感がある」「親しみやすい」「先進的だ」といった印象を受け取っています。

このように、文字の書体(フォント)の選定や配置によって視覚的な美しさと伝わりやすさをコントロールする技術を「タイポグラフィ(Typography)」と呼びます。デザインにおいて最も基本的でありながら、最も奥深い世界です。

私自身、グラフィック制作を学び始めた当初は「なんとなく綺麗だから」という感覚だけでフォントを選んでいました。しかし、フォントの歴史や成り立ちを理解するにつれて、文字のディテールひとつひとつが持つメッセージ性の強さに気づき、今では作品制作で最も時間をかける工程のひとつになっています。

欧文フォントの2大分類:セリフ体とサンセリフ体

フォントを学ぶ上で、まず押さえておきたいのが「セリフ体(Serif)」と「サンセリフ体(Sans-serif)」の大きな違いです。

1. セリフ体(Serif)

文字の端に「セリフ」と呼ばれる小さな飾り(ひげ)がある書体です。伝統的、格式高い、優雅、信頼感といった印象を与えます。代表的なフォントには「Times New Roman」や「Garamond」などがあり、小説の本文や高級ブランドのロゴによく使われます。

2. サンセリフ体(Sans-serif)

「サン(Sans = フランス語で〜が無い)」という名の通り、飾りのないシンプルな直線・曲線で構成された書体です。現代的、親しみやすい、先進的、視認性が高いといった印象を与えます。「Helvetica」や「Arial」「Futura」などが代表例で、IT企業のロゴや標識、Webサイトの本文などで広く活用されています。

フォント選定がもたらすブランドイメージの変革

フォントをほんの少し変えるだけで、ブランド全体のイメージが劇的に変わった有名な事例があります。

例えば、世界的な映画配信サービスの「Netflix」は、かつては一般的なフォントを使用していましたが、ブランドの独自性とライセンス費用削減を目的として、独自のフォント「Netflix Sans」を開発しました。このフォントは、映画のスクリーンを連想させる緩やかなカーブと、クリーンなシネマティック感を表現しており、今ではロゴやUI、広告に至るまで一貫した世界観を作り出しています。

逆に、アパレルブランドの「Gap」は2010年に長年親しまれてきたクラシックなセリフ体のロゴから、シンプルなサンセリフ体(Helvetica)をベースにした新しいロゴへ突然変更しました。しかし、顧客から「Gapらしさが失われた」と猛烈な批判を浴び、わずか6日間で元のロゴに戻すという事件が起きました。これは、フォントが顧客の頭の中でどれほど強くブランドの価値と結びついているかを証明する象徴的な出来事です。

日本語フォント選びと私のこだわり

日本語フォントにおいても、欧文のセリフ体に相当する「明朝体」と、サンセリフ体に相当する「ゴシック体」があります。日本語はひらがな、カタカナ、漢字、さらにはアルファベットが混在するため、欧文以上に全体のバランスを取るのが難しいとされています。

私は自分のポートフォリオサイト(TOMOYA NAKAMA)のビジュアルを構築する際、メインのアルファベットのフォントと日本語のフォントの相性(ペアリング)に非常に悩みました。最終的に、モダンでありながら無骨な印象を与える直線的なゴシック体を選定し、ビジュアルに一貫性を持たせています。

デザインの良し悪しは、フォント選びで8割が決まると言っても過言ではありません。Google Fontsなどのフリーフォントサービスが普及し、誰でも無数のフォントを手に入れられる時代だからこそ、それぞれの書体が持つ「声のトーン」を意識して選ぶ姿勢が大切です。

【参考情報源】
・Netflix Tech Blog “Introducing Netflix Sans”
・小林章 著『フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜその書体なのか?』

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