
Webデザインにおける新たな潮流「ブルータリズム」
近年、美しく整理されたスタイリッシュなWebサイトとは一線を画す、無骨で荒削りなデザインを見かける機会が増えています。巨大なタイポグラフィ、強烈な原色の組み合わせ、あえて崩されたレイアウト、意図的に露出されたグリッド線などが特徴のこのスタイルは、「ブルータリズムデザイン(Brutalist Design)」と呼ばれています。
フラットデザインやミニマリズムが主流となり、どのWebサイトも均質化して見えることへの反発から、この極めて個性的で「正直な」デザインアプローチが再注目を集めています。
私は普段、シンプルで洗練されたポートフォリオサイトを作ろうと日々格闘していますが、デザインを整えれば整えるほど、どこか「他で見たことがあるような無難なサイト」になってしまう葛藤を抱えていました。そんな中で出会ったブルータリズムは、私のデザイン観に大きな刺激を与えてくれた表現手法の一つです。
ブルータリズムの建築的起源
ブルータリズムという言葉は、Webデザイン固有のものではありません。もともとは1950年代から1970年代にかけて流行した建築様式「ブルータリズム(ニュー・ブルータリズム)」に由来しています。フランス語で「生のコンクリート」を意味する「ベトン・ブリュ(béton brut)」から名付けられたこの建築スタイルは、装飾を排除し、コンクリートの質感や構造体をありのままに露出させるデザインが特徴でした。
Webデザインにおけるブルータリズムもこの思想を継承しており、装飾的なアニメーションや過剰なスタイル表現を剥ぎ取り、Webサイトの基盤となるHTMLコードそのものの構造やブラウザ標準の要素(デフォルトの青いリンクテキストなど)をダイレクトに見せる手法をとります。
なぜ今、ブルータリズムなのか
ブルータリズムがデジタル領域で再評価されている背景には、大きく分けて二つの要因があります。
1. テンプレート化されたクリーンなWebデザインへの飽き
現在のWebデザインはWordPressなどのフレームワークの普及とUXデザインの最適化(セオリー化)により、どれも似たようなグリッド、似たような余白、似たような画像配置に収束しがちです。ブルータリズムはこうした「退屈な完璧さ」に対するアンチテーゼとして機能し、ユーザーに強い視覚的インパクトを与えます。
2. 虚飾を嫌い「生の情報」を求めるマインド
過剰に演出されたマーケティングや誇張された表現に囲まれた現代のインターネットユーザーは、洗練されたビジュアルよりも、飾らない「正直さ」や「信頼性」をWebに求める傾向があります。構造やテキストをそのまま差し出すブルータリズムの姿勢は、一部のメディアやアート、アパレルブランドのWebサイトで強い支持を得ています。私自身も、少しズレていたり、荒削りだったりするものに惹かれる性質があるため、この「飾らないかっこよさ」には深く共感します。
ただの「使いにくいデザイン」にしないために
注意しなければならないのは、ブルータリズムは単なる「壊れたデザイン」や「無秩序なデザイン」ではないということです。あえてルールを破る表現を行う裏には、高いタイポグラフィ技術や計算されたカラーレイアウトが必要です。ユーザーのナビゲーションを完全に麻痺させてしまっては、Webサイトとしての本質的な価値(情報の伝達)が失われてしまいます。
コンバージョン(成約)が必要な重要箇所はわかりやすく保ちつつ、アート性の高いエリアやビジュアルで見せたい部分にブルータリズムのエッセンスを取り入れるなど、メリハリのある設計がデザイナーには求められます。私も自身の制作活動(Worksページに載せている作品など)において、この「無骨さと使いやすさのバランス」をいかに取るか、常に試行錯誤を重ねています。
【参考情報源】
・Pascal Deville “brutalistwebsites.com” アーカイブプロジェクト
・Webデザインアワードメディア「Awwwards」トレンド分析記事


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